青色申告のメリット7つ・デメリット3つを解説|白色申告との違いは?

所得税の申告方法には青色申告と白色申告の2つがありますが、これから起業する方や副業を始める方はぜひ青色申告を選択しましょう。青色申告はメリットがいくつもあり、個人事業主として所得を得るのであればぜひ使いたい制度です。

しかし「白色申告と比べて面倒そう」「自分の事業ではメリットがあるかわからない」といった理由で、青色申告を避けている方も多いでしょう。この記事では青色申告のメリット・デメリット・白色申告との違いを解説します。これから青色申告を始めたい方はぜひ参考にしてください。

目次

青色申告のメリット7つ

青色申告のメリットは、以下の7つです。

  1. 最高65万円の青色申告特別控除
  2. 赤字を3年繰り越せる
  3. 家族(専従者)への給料を経費に計上できる
  4. 30万円まで取得価格を一括で経費にできる
  5. 家事に関連する経費を計上しやすい
  6. 貸倒引当金を経費に計上できる
  7. 税務調査を受けにくい可能性がある

メリット①:最高65万円の青色申告特別控除

青色申告を選択した場合、最高65万円の特別控除を受けられます。

青色申告の特別控除額

青色申告における特別控除の条件は以下のとおりです。

申告方式控除額
簡易簿記10万円
現金式簡易簿記10万円
複式簿記55万円
複式簿記(電子申告または電子帳簿)65万円
青色申告の特別控除額一覧

(※1)

控除額は、所得金額から引くことができる金額を指します。課税される所得金額が減れば税金も安くなるため、上手に利用すれば節税が可能です。控除額は支払うべき税金から直接差し引かれる額ではない点に注意しましょう。

※1:No.2072 青色申告特別控除

青色申告と白色申告で所得税額をシミュレーションしよう

控除額によって、所得税額はどれくらい変わるのでしょうか。所得を350万円として特別控除を受けた場合の所得税額を確かめてみましょう。

なお、所得税額は以下のとおり課税される所得額によって税率が異なります。また、課税される所得額によって青色申告の特別控除とは別に下記の控除が受けられます。

課税される所得金額税率控除額
1,000円〜1,949,000円5%0円
1,950,000円〜3,299,000円10%97,500円
3,300,000円〜6,949,000円20%427,500円
6,950,000円〜8,999,000円23%636,000円
9,000,000円〜17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円〜45%4,796,000円
課税所得金額別の税率一覧

(※2)

これを踏まえた特別控除を受けた場合の所得税額は、以下のとおりです。

申告方式所得金額特別控除額特別控除後の課税所得額所得税額
簡易簿記350万円10万円340万円252,500円
現金式簡易簿記350万円10万円340万円252,500円
複式簿記350万円55万円295万円197,500円
複式簿記(電子申告または電子帳簿)350万円65万円285万円187,500円
所得金額350万円のときの所得税額

このように、課税される所得金額によっては所得税額に2倍近くの差が生まれます。青色申告を使えば、税額を大幅に抑えることができるのです。

※2:No.2260 所得税の税率

メリット②:赤字を3年繰り越せる

青色申告を選択すれば、損失を翌年以降に繰越できます。個人事業主の場合は3年間、法人の場合は9年間、損失分を翌年の所得に合算でき、税金を安く済ませられます。「純損失の繰越控除」といわれるこの制度は青色申告のみに適用される制度です。

事業開始初年度に150万円の赤字が発生したとしましょう。白色申告であれば、翌年に黒字が出た場合はその分の税金を支払わなければなりません。しかし、青色申告であれば翌年に黒字が出た場合でも、初年度に発生した赤字と相殺することとなり、所得額が大きく減ります。黒字額と合算してもなお赤字の場合は、損失額が翌々年に持ち越されるのです。

事業が安定していない場合や、所得が不安定になりやすい事業の場合は、赤字を繰り越せるメリットを活かしやすいでしょう。

メリット③:家族(専従者)への給料を経費に計上できる

事業の経営に家族が携わっている場合、その家族は「専従者」という扱いになります。青色申告を選んでいれば、専従者への給料をすべて経費に計上可能です。経費に計上できれば所得額が膨らまず、節税効果が期待できます。

白色申告の場合は事業専従者控除を受けられますが、経費への計上はできません。控除額は以下のいずれか低いほうと定められており、節税効果は低いです。

  • 配偶者:86万円
  • 配偶者以外の親族専従者:1人当たり50万円
  • 所得金額÷(専従者人数+1)

ただし、専従者として家族を働かせている場合は、配偶者控除や扶養控除を受けられません。また、家族を青色専業専従者とするには、生計を一にしていることや12月31日時点で15歳以上であること、6ヶ月以上従事していることが条件です。

メリット④:30万円まで取得価格を一括で経費にできる

通常、10万円以上かかる耐用年数1年以上の資産を購入した場合は、減価償却をします。減価償却は、数年に分けて経費計上して節税できるのが特徴です。

青色申告を選択していれば、30万円未満の資産をその年に一括で経費計上できます。これを「少額減価償却資産の特例」といい、20万円の備品を購入したとしても、購入年に一括で経費として計上できるのです。ただし、特例が利用できるのは年間で合計300万円までです。

計上の仕方は自由に選べるため、所得が多くなりそうな年に一括計上をし、少なくなりそうな年は減価償却すると、節税効果が高まります。以下のような計上方法があるので、所得額や資産額に応じて最適な方法を使いましょう。

経費計上方法利用シチュエーション
消耗品費計上・10万円未満の資産や耐用年数1年未満の資産を一括で経費計上するときに使う
一括償却資産・10万円〜20万円の資産を3年にわたって分割して経費計上するときに使う
少額減価償却資産の特例・10万円〜30万円の資産を一括で経費計上するときに使う
減価償却資産・10万円以上の資産を使用可能年数にわたって分割して経費計上するときに使う。
資産の経費計上方法と利用シチュエーション

(※3)

※3:No.2100 減価償却のあらまし

メリット⑤:家事に関連する経費を計上しやすい

家事に関連する経費とは、水道光熱費や家賃など、日常生活に関連のある費用です。白色申告の場合は家事に関する経費を事業メインで利用している場合のみ認められます。一方、青色申告の場合は自身で明確な基準を設けて事業費を計算していれば、家事関連費を経費として計上可能です。

生活費と事業費が混在する費用をルールに基づき計算し、うち事業分を算出することを「家事按分」といいます。家事按分については、こちらで詳しく紹介しています。(内部リンク)

メリット⑥:貸倒引当金を経費に計上できる

青色申告では、回収できない売り上げを指す「貸倒引当金」を経費へ計上可能です。「貸倒引当金」とは商品の代金が回収できない場合に、回収見込みのない額として経費に計上する金額です。

青色申告であれば、貸金の帳簿額の合計5.5%以下が貸倒引当金として認められます。回収不能な売上を経費にできれば、税金を抑えられます。(※4)

白色申告でも経費計上は認められますが、該当ケースは「取引先に支払い能力がなく、売り上げを実質的に回収できないと判断された場合」のみです。

※4:No.2070 青色申告制度

メリット⑦:税務調査を受けにくい可能性がある

青色申告・白色申告どちらを選んでも税務調査の対象になりますが、青色申告のほうが税務調査を受けにくいと考えられます。

青色申告・白色申告ともにすべきことは正しい所得金額を把握するための帳簿付けであり、どちらを選んだからといってすべきことが変わるわけではありません。加えて、事業規模が大きくなってきているにもかかわらず白色申告で帳簿をつけていると、税務署職員に「なぜこの人は青色申告を使わないのだろう」と疑問視される可能性もあります。

日々の帳簿づけがしっかりしていれば、税務調査を受けたとしても心配する必要はありません。青色申告でも税務調査を受ける可能性はあるため、日頃から正しい帳簿づけを意識しましょう。

青色申告のデメリット

青色申告は節税をはじめ多くのメリットがありますが、以下のようなデメリットも存在します。

  • 55万円以上の控除を受けるには複式簿記が必要である
  • 申請が必要である
  • 決算書作成の負担が大きい

デメリット①:55万円以上の控除を受けるには複式簿記が必要である

青色申告の55万円・65万円控除を受けるためには「複式簿記」での記帳が必須です。

複式簿記とは、2つの科目を使って取引を記録する方法で、「経費」「資産」それぞれの流れがわかるのが特徴です。一方で白色申告で使う単式簿記よりも複雑で、帳簿づけが面倒という難点があります。

複式簿記は、以下のようにして帳簿をつけます。

日付借方貸方摘要
2023年◯月◯日消耗品費 3,000円現金 3,000円A4コピー用紙 2,500枚 
複式簿記での帳簿づけ例

借方・貸方という用語がありますが、借方は「増えたもの」貸方は「減ったもの」と覚えておくとよいです。複式簿記の場合、初めて帳簿をつける方にとっては、相応の知識がないと難しく感じるでしょう。10万円の控除を受ける場合は単式簿記で問題ないため、帳簿づけに慣れるまでは10万円の控除を取るのも選択肢の一つです。

ただし、現在は簡単に計算できる会計ソフトが数多くリリースされています。会計ソフトを導入すれば複式簿記も手間取らず行えるでしょう。主な会計ソフトについては、こちらで紹介しています。(内部リンク)

デメリット②:申請が必要である

青色申告をするには、青色申告をする年の3月15日まで、もしくは開業後2ヶ月以内に税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。開業日は事業主自ら設定できますが、事業を始めてから早めに提出したほうがよいでしょう。

青色申告の申請方法は、こちらで詳しく紹介しています。(内部リンク)

デメリット③:決算書作成の負担が大きい

白色申告で提出する収支内訳書は合計2ページで収まりますが、青色申告で提出する決算書は4ページにまたがります。書類が増えると作成時間が増えたり、帳簿の管理などが面倒になったりするため、注意が必要です。なお、10万円控除の場合は3ページで済みます。

青色申告と白色申告の違い

青色申告と白色申告の違いを表にまとめました。違いを見比べながら、どちらに向いているのかチェックしてみてください。

青色申告白色申告
メリット・節税効果が高い・白色申告では難しい項目も経費計上できる・損失を繰り越せる・記帳が簡単・書類管理の負担が少ない・税務署への申請が必要ない
デメリット・55万円以上の控除を狙う場合は記帳が複雑・税務署への申請が必要・決算書の作成が面倒・節税効果は低い・計上できない経費が多い・損失を繰り越せない
青色申告と白色申告の違い

現在すでに白色申告を利用している方や、これから副業などで事業を始めようとしている方は、青色申告を選択すればメリットを最大限享受できます。反対に、事業収入が少ない方や経理が苦手な方は白色申告で様子を見るのもよいでしょう。

青色申告・白色申告の詳細についてはこちらの記事でも紹介しています。(内部リンク)

まとめ

青色申告のメリット・デメリット・白色申告との違いを解説しました。

青色申告は節税や損失繰越など経営コスト面で大きなメリットがあります。しかし、取り扱いが面倒な点があり、特に経理が苦手な方は敬遠しがちな制度です。申告方式は青色・白色どちらを選んでもあとから変更可能です。自分に合う申告方式を見つけ、健全な経営ができるよう工夫しながら制度利用をしましょう。

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